#68 薬剤師による患者対応で多剤併用は解消できるのでしょうか?
【シナリオ】
あなたは,とある街の薬局の薬局長さんです.
5月の終わり,すでに夏のような暑さでへとへとです.
熱中症対策のポップや販促物の更新をしようと思っていたら,今年入社配属された新人薬剤師さんから声をかけられました.
新人薬剤師さん:
「ポリファーマシーをなんとかしたいんです.
さっきお話したこの患者さんも,薬が多すぎますよね?
もっとポリについて患者さんとお話したいんですが,どうやって切り出したらいいのかわからないんです.
でも,お薬を減らしていきたいんです!何か根拠のあるやり方というか,必勝法ってないんですか?」
[患者情報]
いつも当薬局で調剤をしている67歳女性
既往歴
- 2型糖尿病
- 脂質異常症
- 高血圧
- 心血管疾患の既往なし
服用薬(用量は省略)
- バイアスピリン
- ランソプラゾール
- クレストール
- メトグルコ
- アマリール
- ブロプレス
- デパス
- マイスリー
- PL配合顆粒を7日分(いつも風邪をひいたらこれ!と本人が気に入っている)
- ロキソニン頓服(頭痛時)
患者背景
- 糖尿病と診断されたのは60歳の健康診断ときで,その時点でのHbA1cは8%台→現在は6%台で維持
- 高血圧と脂質異常症は55歳のとき
- 眠剤と安定剤は40代後半ときより服用開始.原因は今も不明であるが,当時気持ちが不安定になり不眠も併発したためそれ以来ずっと服用.特にデパスを飲まないとイライラすることが多く,それで飲み忘れに気づく
- バイアスピリンとランソプラゾールは糖尿病になると血管が詰まりやすくなるから飲んだ方がいいと言われて今まで何も疑わずに服用している
- 薬は自己管理できており,特に服薬に関する不安等はなさそうであるが,「時折体が重だるいときがある.そういう時は風邪薬を飲めば元気になる気がするけれど,他にいい方法があるなら試してみたい」と話している.
「この子はやや気持ちが先走り過ぎていて危なっかしいなぁ」と少し心配になったあなた.
とはいえ,若手の想いをぞんざいに扱うわけにもいかないと考え,
「気持ちはわかる,じゃあ,試しに一緒にこれを読んでみよう」と,
先日偶然見つけた薬剤師主導の多剤併用患者へのアプローチ法についての論文を取り出し,
その場でさらっと読んでみることにしました..
【お題論文】
Martin P, Tamblyn R, Benedetti A, Ahmed S, Tannenbaum C.
Effect of a Pharmacist-Led Educational Intervention on Inappropriate Medication Prescriptions in Older Adults: The D-PRESCRIBE Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2018;320(18):1889-1898.
PMID: 30422193
【使用するワークシート】
ランダム化比較試験を10分で吟味するポイント
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