#140 ICUにおける面会制限は本当に有用なのでしょうか?

#140

2025年度第 2 回薬剤師のジャーナルクラブ開催のお知らせ

開催日時:2025 年 5 月 11 日 (日)
午後 20 時 45 分〜 仮配信
午後 21 時 00 分〜 本配信
なお配信時間は 60 分を予定しております.

ICUにおける面会制限は本当に有用なのでしょうか?

【お題論文】

Fumagalli S, Boncinelli L, Lo Nostro A, et al.

Reduced cardiocirculatory complications with unrestrictive visiting policy in an intensive care unit: results from a pilot, randomized trial. 

Circulation. 2006;113(7):946-952.

PMID: 16490836

令和7年度第2回目の薬剤師のジャーナルクラブです(JJCLIP).

今回のJJCLIPでは,ICUにおける面会制限なしが心血管系合併症を増やすか?についてのパイロットランダム化試験の論文を取り扱います.

本研究は,心臓集中治療室(ICU)において,面会制限の実施(1日2回,各30分間)と面会制限なし(患者が頻度と時間を自由に選択可能)が,環境微生物汚染,敗血症性および心血管系の合併症,感情プロファイル,ストレスホルモン反応に及ぼす影響を比較することを目的としたものです.

研究方法の概要(PICO)

Population (患者): 心臓ICUに連続して入院した患者(一定の除外基準あり)

Intervention (介入): 面会制限なし(UVP)

Comparison (比較): 面会制限あり(RVP)

Outcome (結果): 環境微生物汚染、敗血症性合併症、心血管系合併症、院内死亡率、不安および抑うつスコアの変化、ストレスホルモン(TSH、コルチゾール、バニリルマンデル酸:VMA)の変化量

主な結果:

UVP期間中,患者はより頻繁に(1日平均3.2回 vs 2.0回)かつより長く(1日平均2.6時間 vs 1.0時間)面会を受けました(いずれもP<0.001).

UVP期間中は、ICU回廊および患者室の表面の細菌汚染が有意に高かったものの,敗血症性合併症の発生率は両群間で類似していました.

心血管系合併症のリスクは、RVP期間中で有意に2倍高くなりました(オッズ比 2.0; 95% CI, 1.1-3.5; P=0.03).特に、肺水腫またはショックの発生率がRVP群でより多く見られました.

院内死亡率はRVP群で5.2%、UVP群で1.8%でしたが、統計的な有意差はありませんでした(P=0.28).

UVP群では,入院から退院にかけて不安スコアが有意に低下しましたが,RVP群ではわずかな低下にとどまりました.

ストレスホルモンであるTSHは,両群とも退院時に上昇しましたが,その増加幅はRVP群でより顕著でした(群と時間の交互作用で有意).コルチゾールとVMAの低下幅は両群で同様でした.

結論: ICUにおける面会時間の自由化は,環境微生物汚染を高めるにもかかわらず,敗血症性合併症を増加させることなく,むしろ心血管系合併症を減少させる可能性があることが示唆されました.この利点は,不安の軽減とより良好なホルモンプロファイルに関連している可能性があります.

配信中のコメントも随時大募集いたします.

皆さま奮って,けれどもどうぞお気軽にご参加ください.

JJCLIPってなに?

薬剤師のジャーナルクラブ(Japanese Journal Club for Clinical Pharmacists:JJCLIP)とは, 当法人が運営する,EBMを実践するための学びの場を提供するSNSコミュニティです.

設立当初は薬剤師向けを意識した勉強会でしたが,現在は他職種,および一般の方々にも楽しく視聴できるよう配慮をしております.

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