問いから始まる、新しい景色へ ―― NPO法人AHEADMAPのミッション・ビジョン・バリュー

問いのバタフライ効果

 私たちは2016年の12月に、NPO法人AHEADMAPという地図を描き始めました。エビデンスという確かな道標と、人と人との繋がりを頼りに、新しい価値と豊かさを紡いでいくための地図です。
 Connect the Newという基本理念を軸足に、エビデンスと人と、そして人と人とを繋ぐための「媒介(ハブ)」としての機能を担えるよう、歩みを進めてきました。特に、医療従事者を対象とした根拠に基づく医療(Evidence-based medicine)の実践と普及に関する活動を中核として、様々なワークショップやシンポジウムなどを企画してまいりました。

 一方、生成AIが日常に浸透し始め、エビデンスはより身近なものになりました。かつては専門家だけが辿り着けた知識の海に、今では誰もがアクセスできる時代となりつつあります。このような過渡期の中でも、私たちが歩むべき道の原点は、Connect the Newという基本理念の中にあります。

 今までの生き方やキャリアに対して、何かを追加したいけど、いったい何から始めたら良いか分からないという悩みを抱えている方は多いと思います。当法人の基本理念であるConnect the Newのコンセプトは、「何かが足りない」と感じている方に対して、体験という名前のスパイスを提供することでもあります。

 生成AI技術が社会に浸透しつつある現在、NPO法人AHEADMAPの歩むべき具体的な方向性をあらためて、ミッション、ビジョン、バリューとして表現しました。当法人が果たすべき役割や存在意義、目指す未来像、そして当法人の具体的な行動指針を再定義し、今後の事業活動に邁進してまいりたいと思います。

――朝のコーヒーを飲みながら、ふと頭に浮かんだ素朴な疑問。
――電車の中で耳にした何気ない会話から生まれる小さな関心。
――夜、眠りにつく前に心に残る、答えのない問い。

私たちの日常は、無数の「問い」に満ちています。その多くは忘れ去られ、答えを見つけることなく消えていくのかもしれません。でも、もしその問いを起点に新しい視座を与えることができたら?もしエビデンスという羅針盤が、あなたをまだ見ぬ景色へと導いてくれたら? 私たちは、そんな小さな問いを大切にします。その問いを豊かな生活体験へと変える橋渡しとしての役割を目指します。

家でもない、職場や学校でもない、そんな「第三の場所」。私たちが創造したいのは、誰もが気軽に立ち寄れるサードプレイスです。そこでは、失敗を恐れる必要などありません。幾度もの試行錯誤が許され、素朴な問いが歓迎される場所。好きな本とコーヒーを片手に、ふらりと訪れて、何かを学び、誰かと対話し、また日常へと戻っていく。
エビデンスは、もはや医療者だけのものではありません。それは私たちの暮らしに自然に溶け込み、より良い意思決定を支えてくれる、静かな伴走者になるべきです。
生成AIが生活に浸透していく中で、医療や健康に関する情報へのアクセスは驚くほど容易になりました。しかし、これらの情報を自分の生活に統合していくプロセスにおいては、人の想いや価値が交錯する場が必要だと考えています。

世界は思いがけない出会いで満ちています。異なる専門性を持つ人、違う価値観を抱く人、まったく別の背景から来た人。そんな人たちがエビデンスを起点に出会うとき、誰も予想しなかった新しい価値が生まれます。私たちは、そんな繋がりの触媒(ハブ)でありたいと思っています。

本当の学びは、実際に手を動かし、誰かと対話し、時には失敗し、そこから気づきを得る、そんな体験の中にこそあるのではないでしょうか。私たちは、一人ひとりが自ら考え、行動し、発見できる場を提供します。正解を教えるのではなく、あなた自身が答えを見つけるプロセスを支援します

エビデンスに示されている客観知は、必ずしも生活を豊かにするための「答え」ではありません。エビデンスは、よりよい意思決定へ至るための道筋であり、新しい対話の出発点でもあります。
固定観念にとらわれず、常に好奇心を持って問い続けること。それが、私たちの探求の姿勢です。わからないことを「わからない」と言える知性。知っていると思っていたことを、もう一度疑ってみる柔軟さ。そんな開かれた想いを、私たちは大切にします。

――華やかな成功よりも、静かな継続を。
――無理なスピードで駆け抜けるよりも、ゆっくりと、でも着実な歩みを。
小さな一歩を積み重ねていくこと。それが、組織としても、関わるすべての人にとっても、長期的な変化と豊かさを生むことだと私たちは信じています。ベストセラーではなく、ロングセラー。そんな価値体験を提供したいのです。


 気象学者のエドワード・ローレンツをご存じでしょうか。1960年代、ローレンツは、単純化した気象モデルの方程式(ローレンツ方程式)をコンピューターで計算していました。ある日、彼は計算途中の数値をあらためて入力し直したところ、当初とはまったく異なる気象予測が得られてしまいました。

 ローレンツは、コンピューターに全く同じ気象変数を入力したつもりでしたが、計算途中の数値が端数処理されていたことに気づきます。実に、小数点以下3桁で端数処理してしまったため、4桁以降の数値が入力されていた気象予測とずれが生じていたわけです。

 しかし重要なことは、1万分の1以下のごくわずかな数値のずれでも、中長期的には巨大な気象現象の相違を生み出すということです。ローレンツはこの現象を、「ブラジルでの蝶の羽ばたきが、テキサスで竜巻を引き起こすかもしれない」と比喩しており、後にバタフライ効果などと呼ばれることになります。初期条件のわずかな違いが、時間とともに指数関数的に増大し、全く異なる未来の結果を生み出すという現象は、決して珍しいことではなく、私たちの日常そのものなのです。

 NPO法人AHEADMAPのミッション、ビジョン、バリューもまた、生活の豊かさに資するようなバタフライ効果の源泉を目指しています。オンラインコミュニティでの活動や、ワークショップの企画などを通じて、様々な偶然の出会いを提供し、当法人に関わる全ての人のキャリアを豊かなものに変えていきたい。そんな願いが込められています。